とある展示会で私達の目は釘付けになった。
そこには、カーボンファイバー(炭素繊維)の織物が展示されている。
その織物は『西陣織』と記されていた。
カーボンファイバーは様々な工業製品に使われることが多く、
カーボン調といったデザインで思い浮かべるのは、
平織りや綾織りといったパターンではないだろうか。
私達も仕事柄、色々なカーボン製品を見ることが多く、
大概は驚く事は少ないのだが西陣織は目を見張る物があった。
それは日本独自で築かれた伝統と、最先端の技術を融合されているのである。
『この西陣織をロッドに使えないだろうか?』
素直にそう思えた。
何よりも、国産品として同じ方向を見ていると思えたからだ。
善は急げと、さっそくアポイントを取り織元を訪問する機会を得られた。
西陣織とは、京都の北西部に位置する地区で織られる織物の総称である。
この地区で織られ認められたモノだけが『西陣織』を掲げられる。
私達が訪れた工場は、古き良き街並みの一角にあった。
外からでも機織りの音が聞こえてくる。
聞くと一日掛けても数センチしか織れないモノもあり、
途方もなく手間が掛かる作業の積み重ねで作られているのだ。
何百何千もの絹糸を織り機にかけ、複数のパターンに合わせて織り込まれている。
この絹糸をカーボンファイバーに置き換えて織る訳だが、
絹糸とは繊維の強さや太さなどが違い、開発には困難を極めたという。
そうして出来上がった織物は、唯一無二のモノだ。
先日、新聞に掲載されたコラムに気になる事が記されていた。
国内での和装文化の衰退が著しいとのことだ。
着物などを着る機会というのは、成人式や結婚式など大概の方は数回着るかどうかで
普段より和装をしている方は少なくなってきている。
ここ数年は和風文化の人気で海外からの注目度が高く、
着物をはじめとした製品を求める方が外国人の場合が多い様だ。
いくら伝統があっても、需要が無ければ産業は成り立たない。
弊社のHPにも掲載した、 【織元の想い】 を読んで頂ければ分かる通り、
織屋の数は最盛期の10分の1に減少し、今後技術の継承を考えるのであれば
新しい事への挑戦が必須という面は確かなのだ。
さて話を 西陣織 に戻そう。
このカーボンファイバーの 西陣織 は、バッグ類などの服飾関係に使われ
他にも車のパーツ等にも使用されている。
しかし釣竿などのパイプ形状にされた事は前例がなく、ゼロベースからの発進となった。
プリプレグ(カーボンシートに樹脂を含浸させたモノ)を作成し、
円筒形に成形する工程を進めていく。
一般的なカーボンクロスとは違い、幾重にも編み込まれた繊維であり、
厚く硬い素材のため単純に丸めてロッド状にするのは容易ではない。
ここで活きてくるのが、長年培ってきた職人の技である。
様々なクロスを扱ってきた経験と工夫で、パイプ状に仕上げてきたのだ。
カーボン繊維を紡ぎ、何百何千もの繊維を織る職人がいる。
織物に樹脂を含浸する職人がいる。
シートを成形しパイプ状に加工する職人がいる。
1つのパーツに、幾人もの職人の手を介して出来上がっている訳だ。
日本独自の『文化』と、職人が手仕事で伝えきた『技』を感じて欲しい。
Staff Funaki
JUGEMテーマ:フィッシング
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