Fuji技徳カーボンキャスティングハンドルの発売を記念して、
『Basser』にて掲載されたスピードスティック特集記事を公開。
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『90歳のフルスイングに見る新生スピードスティック』
写真・文=金澤一嘉
写真提供=天龍
スピードスティックとは、1970年にアメリカの
ルーチルドレ社(Lew's)が発売したバスロッドで、
50代以上のアングラーのなかには少年時代に使っていた人もいることだろう。
そして、当時ルー・チルドレ氏とともにスピードスティックを開発し、
生産したのが、ロッドメーカー天龍の現会長、塩澤美芳さんだ。
1970年にアラバマ州のLew's社から発売された初代スピードスティック。
開発と生産をしたのが現在の天龍の会長、塩澤美芳さんだ。
90歳になった塩澤さんがフルスイングで新生スピードスティックを曲げると、
ロッドがルアーを前に押し出してくれる。
釣りが一生楽しめる趣味であることを教えてくれるロッドだ
当時の一般的なロッドは、ダルいアクション、重たい金属製のグリップ、
ガイドは簡易的なものが多く、ルー氏は重さやダルさのない新しいロッドを求めていた。
塩澤さんは1961年に長野県でロッドメーカーを創業して、
1963年にはグラスロッドの生産をしていた。
ルー氏の依頼を受けた塩澤さんは、新しいバスロッドを開発するにあたり、
素材はグラスでありながら繊細なティップとシャープなアクションをもち、
ガイドや強化樹脂製のリールシートには富士工業の新しい技術を採用した。
ルーチルドレ社(Lew's)からスピードスティックが発売されると、
日本製のバスロッドがアメリカで高く評価されたのである。
それから50年の時を経て、2020年の夏に新しいスピードスティックが発売された。
開発のきっかけは、数年前に天龍本社の倉庫で発見された古いロッドだった。
社員が倉庫を片付けていると、古いロッドが出てきた。
ホコリがかぶったグリップを拭うと、
リールシートに「Fuji SPEED」と書かれたロゴが現われた。
グラスロッドだがダルさはなく収束が早い。
そのロッドこそが50年前に開発された
スピードスティックの初期の製品とプロトモデルだった。
「手にしたとき、新しいロッドのイメージが見えてきた」と
新生スピードスティックを開発した社員の舟木雄一さん。
そして、スピードスティック・プロジェクトが始動した。
初代から50年の時を経てリビルドされた、新生スピードスティック(2020年7月発売)。
コンセプトは「ルアーフィッシングを心から遊べるロッド」
天龍で保存されている、初代スピードスティックのプロトタイプ(下の2本)。
中央のコルクグリップのロッドのほうがより初期のモデルで、
リールシートの文字と、ロッドの文字の向きがそろっていない。
下はその後のモデル。上はスピードスティックより前の1960年代に塩澤さんが
ルーチルドレ社に納品していたグラスのノベザオ。
ノベザオでの実績がバスロッドの開発につながった。
初代スピードスティックの初期モデルは、1970年にアメリカのLew's社から発売された。
どちらも長さ5ft9in、軟らかめの#1アクション、上は1ピース、下は2ピース。
文字ブロックの右下に、TENRYU JAPANと印字されている。
1970年代当時のロッドを再現する復刻ではない。
初代スピードスティックのDNAを受け継ぎ、現代の素材と技術で「リビルド」した
新生のスピードスティックを創り上げたのである。
ブランクの素材は超低弾性カーボンを採用。
カーボンならではの軽さとシャープな振り具合でありながら、
負荷をかけるとグラスロッドのようにじわじわと深く曲がっていく。
曲がることでトルクを生み、投げやすく、掛けた魚をバラさずに寄せることができる。
新生スピードスティックのグラスロッドに限りなく近いフィーリングは、
店頭で振って、曲げて体感してみることをオススメする。
塩澤さんは初代スピードスティックの試作モデルを持って日本とアメリカを何回も往復した。
ルー氏の自宅プールでスピードスティックの開発テストをする
ルー・チルドレ氏(左)と若き日の塩澤さん(中央)
次回は、50年前の初代スピードスティック開発のエピソードと、
新生スピードスティックの開発について紹介する。B
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この記事は、Basser 2020年11月号に掲載された記事です。
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