蘇るSPEED STICK(第2回)

Fuji技徳カーボンキャスティングハンドルの発売を記念して、
『Basser』にて掲載されたスピードスティック特集記事を公開。
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『50年前の開発現場と新生スピードスティック』
写真・文=金澤一嘉
写真提供=天龍

スピードスティックは1970年にアメリカ・アラバマ州の

ルーチルドレ社(Lew's)が発売したバスロッドだ。

当時ルー・チルドレ氏とスピードスティックを開発し生産したのが、

1961年に長野県でロッドメーカーを創業して、

1963年にはグラスロッドの生産を始めていた塩澤美芳さん(天龍の現会長)。

 

リールシートは富士工業のPTSというモデルを採用。
オールドモデルのアンバサダーから、最新のリールまで取り付けられる。
現在のスプール性能が高いリールを使うと、シャッドや4inグラブもキャストできる。
塩澤さんはオールドテイストの五十鈴工業のリールでハンクルのウエイクジョーダン115をキャスト

 

当時はグラスロッドの時代で、重くダルいアクション、

重い金属製のグリップ、ガイドは簡易的なものが多かった。

ルー氏の「サオ先は日本的に繊細で軟らかく、

でも大型のフロリダバスが釣れるバスロッドが作りたい」

という依頼を受けた塩澤さんは開発にとりかかった。

塩澤「サンプルを作ってロッドの束を飛行機に乗せて、

アラバマ州のルーの会社に持っていきました。

日本人が海外渡航するのが難しい時代に、日本とアメリカを1年間に6往復して、

約300本のサンプルを現地でテストしました。

ところがテスト釣行でアメリカ人のバスプロだという屈強な男が30分も釣りをすると、

強烈なアワセでサンプルが折られちゃうわけですよ。

わざと根掛かりさせて力いっぱいロッドを曲げるから折れて当たり前ですよ。

彼らの話では、こん棒のようなサオがアメリカのサオなんだと。

 

初代スピードスティック開発当時のテスターたち。
塩澤さんが日本から持参したサンプルをわざと折るような屈強な連中だった。
後にスピードスティックのコンセプトを理解して愛用したアングラーも多い。

しかし、ルー・チルドレ氏と私が作ろうとしたのは、

サオ先が繊細でシャープなアクションのロッドです。

ガイドは富士工業さんのものを改良してもらい、

グリップは金属製ではなくルー氏が削ったオフセットハンドルの原型をもとに、

富士工業さんにお願いして強化樹脂で作りました。

こうして私の工場で完成させたのが初代スピードスティックです」 

 

当時の最新の技術を盛り込んだ革新的なロッドは、

グラスとしては軽くて感度が高くアメリカで高評価を受けた。

強化樹脂製のグリップはその後のスタンダードになっていく。

 

それから50年の時を経て、今年の夏に新生スピードスティックが発売された。

70年代当時のロッドを復刻するのではなく、

初代スピードスティックのDNAを受け継ぎ、

現代の素材と技術による、美しく曲がる、巻きモノに適したモデルだ。

 

初代から50年の時を経てリビルドされた、新生スピードスティック(2020年7月発売)。
パワー表記「#1L」の5ft6inモデルと、6ftモデルは、
使うリールによってシャッドなどの小型軽量のプラグを飛ばせる。

開発した天龍社員の舟木雄一さんはこう話す。

「復刻を求める声もありましたが、ブランク、ガイド、グリップ、リールシート

すべてが50年で進化して今に至っています。

塩澤会長に言われたのは、『自分たちが作りたいものを作れ』ということ。

現行の高い性能をもつ素材やパーツを使って、ジャンルで言えばノンジャンル。

トップロッドでもなく、トーナメントロッドでもない、

あえて言えばルアーロッドである事がテーマです」 

ブランクは、グラス素材からカーボンまでいろいろ試した。

そのなかでフィーリングがよかったのが、超低弾性カーボン素材だった。

軽さとシャープな振り具合でありながら、負荷をかけると

グラスロッドのようにじわじわと深く曲がりトルクを生む。

投げやすく、ルアーがよく泳ぎ、掛けた魚をバラしにくい。

 

1970年にアラバマ州のLew's社から発売された初代スピードスティックは、
天龍の会長、塩澤美芳さんが開発して製造した。
御年90歳の塩澤さんは、釣りザオに関わる仕事歴73年(17歳~90歳)のレジェンド。
フルスイングで新生スピードスティックを曲げる。

全5機種のうち、5ft6in、6ft、6ft6inの3モデルは、

初代スピードスティックに同等のスペックのモデルがある。

ブランク、ガイド、グリップを含めたトータルバランスが優れて、

日本人の体格に合ったひとつの黄金比だという。

現代の巻きモノの釣りでも有効な普遍的なアクションを

味わってほしいと、開発者の舟木さんは語った。B

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この記事は、Basser 2020年12月号に掲載された記事です。
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