Fuji技徳カーボンキャスティングハンドルの発売を記念して、
『Basser』にて掲載されたスピードスティック特集記事を公開。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『ネオクラシックなテイストにまとう特性と機能』
写真・文=金澤一嘉
写真提供=天龍
取材協力=野尻湖レンタルボート吉野屋
復刻ではなく、新生。開発コンセプトは「ルアーフィッシングを心から遊べるロッド」。
初代スピードスティックのDNAを受け継ぎ、現在の技術を使って新しいロッドを創り出す。
そのDNAとは、シャープな振り心地で、よく曲がり、曲がることでルアーを飛ばし、
ルアーを操作しやすく、掛けた魚をバラさずに引き寄せること。
こうしてロッドメーカー天龍の開発チームは、50年ぶりにスピードスティックを誕生させ、
2020年7月に5つのモデルをリリースした。
初代のDNAを感じさせる、美しく曲がる、おもに巻きモノの釣りに合ったモデルだ。
1970年に米国Lew's社から発売された、日本製初のバスロッド
「スピードスティック」を開発製造したのが、現在の(株)天龍会長、塩澤美芳さん。
2020年に90歳になってなおベイトロッドをフルスイングする!
釣り竿に関わる仕事歴73年(17歳~90歳)のレジェンド。
新生スピードスティックにオールドテイストのリールを装着しつつ、
ハンクルのウエイクジョーダン115 を使うネオクラシックスタイル。
塩澤会長はビワマス釣りのシーズンには月に2~3回、
自分で運転して琵琶湖北湖に通う現役のアングラー。
新生スピードスティックのブランクは、超低弾性カーボン。
グラスロッドに近い感覚で、よく曲がることでトルクを発生させ、
ルアーを前に飛ばす。90歳の塩澤会長がバックスイングでロッドをしっかり曲げていることがわかる。
ガイドはステンレスフレームKガイド(SiC-Sリング)を採用。
SiC-Sリングは、SiCリングをさらに薄く軽くしたリングのこと。
フレームはバット側はLKWというダブルフットを使用。サオ先側はKTというシングルフットを使用。
いずれもフレームに傾斜がついてラインが絡みにくくなっている。
フレームの素材はあえてステンレスを採用。チタンに比べて若干重いことで
ロッドを振ったときにブランクがより曲がりやすくなり、キャストにメリットをもたらしている。
振り心地はグラステイストになる。「手にとると軽く軟らかい印象ですが、
実際にキャストすると投げやすさを感じます」と開発担当の舟木さん。
折りたたみ式のフックキーパー(富士工業)つき。
「フックキーパーの位置は、お気に入りのルアーを掛けたときに、
ロッドのネームプリントと一緒に写真が撮れる位置にしました。
見栄えがいいかなと。使わないときは畳んでおけます」と開発担当の舟木さん。
パワー表記、#2(ミディアムパワー)の6ft6inクランキンモデル、
TSS#2-266Bでクランクベイトをキャストする舟木さん。
曲がるロッドがルアーを押し出す心地よいキャストフィール。
新生スピードスティックの特性は、超低弾性カーボン素材による曲がるロッドであること。
5ft6inの「#1L-256B」をフルスイングしてウエイクジョーダン115 を飛ばそうとする塩澤会長。
塩澤会長のキャストは振りが速いわけではなく、
バックスイングでロッドを曲げることを重視した投げ方。
よく曲げたロッドが戻るときにルアーを加速させていることを、ルアーからしたたる水滴が物語る。
開発担当の舟木雄一さんは語る。
「現在の高性能な素材とパーツを使って、おもにプラグを使ったバスフィッシングという
遊びを味わえるロッドにしました。ブランクは超低弾性カーボン製です。
軽くてシャープな振り心地でありながら、グラスロッドのように深く曲がりトルクを生み、
投げやすく、ルアーがよく泳ぎます。充分に軽く、
幅広いルアーが使えるので、10年、20年使えるロッドです」
開発担当の舟木さんは、リザーバーや琵琶湖で、
スピードスティックに追加する新作の開発テストしているという(発表時期未定)。
写真は琵琶湖北湖でジャークベイトに反応させたバス。
ロッドのパワー表記は、#1L=L、#1=ML、#2=M、#3=M〜MHの中間の4段階。
狭い釣り方に特化したモデルではなく、ロッドの汎用性が高いので、
ロッドパワーとルアー重量を合わせることで、あらゆる巻きモノに幅広く対応できる。
また「スピードスティック=よく曲がるロッド」を起点にして、
各種ラインと組み合わせることで、ルアーの特性を生かした釣りができる。
#1L-256Bの5ft6inという長さ(短さ)は、
ジャークやドッグウォークなどロッド操作でルアーをアクションさせやすい。
たとえば、PEラインを組み合わせると、スピナーベイト、バズベイト、
チャター系、スピンテールジグ、スイムジグなどに向いている。
PEラインは伸びがなく感度が高い。ルアーの振動(泳ぎ)が手もとに伝わりつつ、
ロッドはよく曲がりバネの役割りをするので、その柔軟性によってバイトを弾かず掛けやすい。
リトリーブ中にウイードに当たったときも、ラインが伸びないので、
ロッドとラインを一直線にすればウイードを切り外しやすい。
曲がるロッドと伸びないPEラインの組み合わせで、
ルアーの泳ぎとモノへのタッチを感知できる高感度を保ちつつ、
バイトは弾かずにシングルフックを掛けるセッティングだ。
また、よく曲がるロッドと、フロロカーボンラインの組み合わせは、
クランクベイトやバイブレーション、ジャークベイトとの相性がよいし、
ナイロンラインとの組み合わせはトップウォーターとの相性がよい、といった基本的なことも、
超低弾性カーボンのブランクによってより強く実感でき、
快適なキャストフィールとリトリーブ感を味わえるだろう。B
本誌取材の前に「みっともないキャストはできない」ということで、
野尻湖に自主練に出た塩澤会長。そのとき釣ったヤングスモール。
記者の知る限り最高齢のバスアングラーだ。
全5機種に共通の特性
◎ブランクの素材は超低弾性カーボン。よく曲がり、グラスロッドに近いフィーリング
◎ブランクは軽く、ダルさがなくシャープな振り心地
◎ロッドパワーは、#1L、#1、#2、#3の4段階
◎よく曲がりトルクのあるロッドのメリット。
①投げやすい、②ルアーがよく泳ぐ、③掛けた魚をバラさずに寄せられる
◎グリップが外せるタイプの2ピースモデル
◎コルクグリップを採用
◎ステンレスフレームKガイド(SiC-Sリング)
◎折り畳めるフックキーパー付き
◎リールシートは富士工業のPTSというモデル。
オールドのアンバサダーから、最新のロープロファイルリールまで装着可能。
現在のスプール性能が高いリールを使うと、
シャッドやヤマセンコーノーシンカーなども快適にキャストできる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
この記事は、Basser 2021年1月号に掲載された記事です。
記事の内容および写真の無断で複製(コピー)することは、
法律で認められた場合を除き、著作権および出版社の権利の侵害となりますので、
その場合はあらかじめ小社まで承諾を求めて下さい。
【関連記事】
・プロジェクト4『NEWスピードスティック』(シリーズ紹介)
JUGEMテーマ:フィッシング
コメント